ミックス犬のおもしろさ

皆さんは、愛犬の犬種の歴史を知っておりますでしょうか。今回はミックス(クロスブリード)の歴史をご紹介します。愛犬がどのような歴史をたどってきたのか覗いてみましょう。

雑種と純血種の違いは、金太郎飴になるかならないかの違いでもあります。切っても、切っても同じタイプ(見かけにおいて、そして性質において)が出てくるのが純血種。つまり生まれる子犬が親のコピーになる、ということです。そして切ってもまるで別のものがでてくるのがミックス。

だからこそ、見かけにしろ性格にしろ、どう特徴が現れるのか分かりません。それもミックスのアジであります。ちなみにここ10年ぐらい純血種同士を交配して、「デザインドッグ」なるミックス犬が持て囃されていますが、これこそ何がでてくるかわからない面白さを味わおうというものでしょう。ただし個人的にはデザインドッグなるものに諸手を挙げて歓迎していません。もちろん犬には罪はなく。それをわざわざ作る人間に罪あり、でしょう。というのも何が出てくるか分からないものをあえて作るのは、責任のないいい加減な繁殖にもつながりやすいのではないのでしょうか。

何がでてくるか推測するために知っておきたい体の特徴
何がでてくるかわからない、とはいってもある程度推測できる場合もあります。それには、純血同士で作られたF1個体(雑種一世代)をみるといいでしょう。何がどう遺伝されるのかわかりやすいというもの。そこで以下の例でちょっと遊んでみましょう!

写真1はローデシアンリッジバックという南アフリカを原産とする犬(写真2)とロットワイラー(写真3)のミックスです。なかなか聞きなれない犬種名ですが、ヨーロッパではいずれの犬種もとてもポピュラーです。そして、そのミックスも多いです。ロットワイラーもローデシアン・リッジバックもスムースコートなので、ミックス犬のコートもやはりスムースになりました。

そしてこの犬の顔の眉間シワに注目。ローデシアンらしいプリミティブ・ドッグ(古代犬)にありがちの眉間皺から授かったものに思えます。観察するかぎりでは眉間皺はどうも顕性遺伝(優性遺伝)をする感じですね。もう一つの例を写真4で見てみます。これはロットワイラーとシャーペイ(写真5)のミックス。シャーペイなど、アジア系の犬にも眉間シワはよくみられます。そしてこのミックスにもそれがはっきりとでているのがわかります。それからもう一つ面白い点は、ローデシアンリッジバックの背中のリッジもどうやら顕性遺伝するものらしいのです。写真6には写真1のミックス犬の背中ですが、しっかりとリッジが表れています。

前述したスムースコートですが、ロングに対してスムースは顕性遺伝をします。写真7はそのよい例です。これはドーベルマンとフラットコーテッドレトリーバーのミックス。この犬にはフラットのロングコートは表されていませんね。ドーベルマンのごとくつやつやのコートです。つまりスムースコートは顕性遺伝することをはっきり示しているというわけです。

何故雑種にはフォーン系が多い?
純血同士の雑種ではなく、いわゆる<純>雑種にマール柄や赤い毛の子があまりいないことに気がついたことがありますか?マールというのはダックスフンドでいうダップルにあたるコートパターンです。そしてこれは顕性遺伝子にあたります。

雑種には選択交配を経て生まれたわけではありません。なにもかも自然に任せるまま。するとマールのようにつもりつもると致死的な効果を及ぼす遺伝子というのは、いつのまに雑種群の中から消え去ってしまうようです。それもそのはず、死んだらその遺伝子を子孫に伝えることができないから、結局残らないのですね。

赤いコートの犬があまりいないのは、赤を生み出す遺伝子は潜性だからです。そしてたいていの雑種が柴犬のようなフォーンカラーを持つのは、ひとえにこの色を担当する遺伝子が顕性のためです。

雑種はマルチプレーヤーで純血種は専門家

みかけだけではなく、行動はどう雑種に遺伝されるのでしょうか?雑種と純血の行動における違い、というのはかなり大きいものです。雑種には、純血種のような特に秀でた「犬芸」というのがあまりありません。どちらかというと広く浅くオールラウンドに犬技をこなします。ここで言う犬技というのは、純血種の持つ独特の作業能力。ボーダーコリーの羊集め能力やポインターの鳥をみつけたら凍りつく能力、ブラッドハウンドの足跡追求力がその例です。

ある行動が欲しくて意図的にミックスをつくることもあります。これは血統書に関係のない実用度が決め手となる狩猟犬や作業犬の世界に多いものです。シベリアンハスキーにグレーハウンドの血を入れて走りの性能のいい橇犬が作られています。狩猟家の間でも意図的な異種交配は日常茶飯事。より良い獣猟犬を得ようと、ハウンド系と日本犬を掛けたりもします。ヨーロッパの狩猟家もスピッツ犬にドイツスパニエルを掛け、猪猟に適したイヌを作る。ただしこれら雑種はいずれもF1世代(=雑種一代)限り。その後、かけあわせても専門化した特徴はどんどん薄められてゆきます。次のが欲しければまた純血種同士をかけてミックスを作り直していかなければなりません。

「専門分化している犬種に別の血をいれれば、イヌはより平均的な動物、つまりもとのオオカミに近くなってゆきます」
とは、スウェーデンのイヌ学遺伝学者のL・スウェンソン博士の言葉。だからこそ、雑種には「これ!」という行動がなく、しかし「いぬらしい」行動形態はとどめているというわけです。

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文:藤田りか子

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